犬にワクチン接種は必要!

結論からお伝えすると、犬のワクチン接種は必要です。

ワクチンは2種類に分けることができ、年1回の接種が義務付けられている「狂犬病ワクチン」と、任意の「混合ワクチン」があります。

さらに、「混合ワクチン」には、感染率や重症化率、致死率が高いウイルスに効果があり、すべての犬に接種が強く推奨されている「コアワクチン」と、多頭飼育など生活環境や居住地域などにより感染リスクが高い犬に推奨される「ノンコアワクチン」があります。

「混合ワクチン」の接種は義務ではありませんが、ドッグランやペットホテル、ペットサロンなど、さまざまな犬が利用する施設では、利用時に「混合ワクチン」接種の証明書が必要になる場合もあります。
義務の有無に関わらず、快適なペットライフを送るためにワクチン接種は必要なものと考えておきましょう。
ワクチンの種類

犬のワクチンの種類と予防できる病気

狂犬病ワクチン

なぜ、狂犬病ワクチンの接種が義務付けられているかというと、狂犬病を発症すると、犬も人間もほぼ100%の確率で死に至る恐ろしい病気だからです。
そのため、厚生労働省は、生後3カ月以降のすべての犬に対し、年1回のワクチン接種を義務付けており、未接種の場合、20万円以下の罰金が科せられる場合もあります

アニコム パフェ 獣医師

アニコム パフェ  高野 航平先生

年1回の狂犬病ワクチンの接種だけでなく、飼育を開始してから30日以内(生後90日以内の場合は、生後90日を経過した日から)にお住いの自治体に登録することが義務付けられています。

混合ワクチン(コアワクチン)

混合ワクチンの種類
「混合ワクチン」のうち、接種が強く推奨される「コアワクチン」は、次のようなウイルスに効果があります。

犬ジステンパーウイルス

人間のはしかに似たウイルスで、感染している犬の鼻水、唾液、目やに、尿との接触や空気感染で感染します。
感染すると発熱し、子犬や免疫力の弱い犬の場合、脳炎を起こして麻痺が残ることもあります。

犬パルボウイルス

感染している犬の便などに含まれ、口や鼻から取り込んでしまうことで感染します。
感染すると、下痢や血便、嘔吐などの消化器症状があるほか、白血球の減少、心筋炎、重度の脱水や食欲不振、元気消失を伴い、死に至ることもあります。

犬伝染性肝炎

アデノウイルス1型が原因の感染症です。
感染している犬の尿や唾液などの分泌物が、ほかの犬の口に入ることで感染し、発熱、腹痛、嘔吐、下痢などを引き起こします。
また、病気の回復期に目の角膜が白濁する症状がみられることがあります。
1歳以下の幼犬や、ほかのウイルスと混合感染をしている場合の致死率が高いとされています。

犬アデノウイルス2型

感染力の強い呼吸器の病気で、乾いた咳のほか、発熱、食欲不振、くしゃみ、鼻水などの症状がみられます。
また、ほかのウイルスとの混合感染で症状が重くなり、肺炎を引き起こすことがあります。

混合ワクチン(ノンコアワクチン)

特定感染症向けの「ノンコアワクチン」は次のウイルスが予防できます。

犬パラインフルエンザ

感染した犬の咳やくしゃみなどの飛沫物によって感染する病気です。
感染すると、乾いた咳や鼻水、発熱のほか、元気や食欲低下などの症状が現れます。単独感染では症状が軽いですが、ほかのウイルスや細菌と混合感染によって重症化することもあります。

犬コロナウイルス

成犬が感染しても症状が出ないケースが多いですが、子犬の場合、下痢や嘔吐、元気消失や食欲低下などの症状が見られ、悪化すると激しい胃腸炎を起こし、死に至る場合もあります。
また、犬パルボウイルス感染症との混合感染が多く、その場合は重篤な症状となり、成犬でも死亡する危険性が高まります。

犬レプトスピラ

感染した動物の尿や、その尿に汚染された土壌や水などが主な感染源になります。
無症状のまま自然治癒する不顕性が多く見られますが、その一方で出血型と黄疸型といった症状が現れるケースもあります。
出血型は発熱ののち、結膜充血や粘膜の点状出血、下痢や嘔吐がみられ、黄疸型では、黄疸や出血症状、血色素尿などの症状がみられるのが特徴です。死亡率が高く、人間にも感染します。

アニコム パフェ 獣医師

アニコム パフェ  高野 航平先生

キャンプや山歩き、川遊びなどのアウトドア、ドッグランによく連れて行く子には、レプトスピラが含まれたワクチンを接種することをおすすめします。
室内飼いで、お散歩もおうちの近くのアスファルトを歩く程度の子であれば、レプトスピラが含まれていなくてもよいでしょう。
ただし、レプトスピラ症の発生には地域差があるので、全頭接種をすすめられている場合もあります。詳しくはかかりつけの先生に相談にしましょう。

犬のワクチン接種を受ける時期・間隔・場所

注射済票のイメージ

狂犬病ワクチンの場合

狂犬病のワクチンは、初回を生後91日以降に接種し、以降、年1回の間隔で接種しましょう。もし生後91日以上で、ワクチン未接種の犬を迎えた場合は、お迎えから30日以内に接種しておきましょう。
なお、狂犬病ワクチン接種後に混合ワクチンを接種する場合は、2週間程度の時間を空けるのがよいとされています

また、接種方法は、自治体による集団接種と、動物病院での個別接種があります。
ごくまれにワクチンにアレルギー反応を起こす場合もあるので、初回は動物病院で接種したほうが安心かもしれません
2回目以降、集団接種を受ける場合は、市町村にから送付される案内はがきなどの情報をもとに接種を受けてください。

また、予防接種をすると「注射済票」(「狂犬病ワクチンを注射した」という公的な証明)が交付されます。
動物病院で個別に接種した場合は、別途、役所へ届け出をし、「注射済票」受け取らなければならない場合もあります。
関連する記事

混合ワクチンの場合

ワクチン接種のタイミング
(※)以降年1回接種
子犬は、母犬の初乳から移行抗体という免疫をもらうことで、さまざまな感染症から守られています。
しかし、次第に免疫は薄れてくるため、生後6~8週目には1回目の混合ワクチンを打つ必要があります。
その後、3~4週間後に2回目、さらに3~4週間後に3回目を接種するのが理想的なペースです。
子犬の場合は、生後16週齢を超えて3回目のワクチン接種日が設定できるのが望ましいです。

以降は年1回の接種が一般的ですが、ワクチン接種のタイミングや頻度は獣医師によって見解が分かれます
狂犬病ワクチン接種と同時に受けることはできないといった注意点もあるので、信頼できる獣医師に相談しながら接種スケジュールを組み立てましょう。

また、混合ワクチンは任意のため、動物病院での個別接種になります。
2~10種混合まで組み合わせの種類があるので、愛犬にはどの種類のワクチン接種がいいのか、獣医師と相談しながら決めるといいでしょう。

また、ワクチンは副作用のリスクもゼロではありません。
死亡する確率は限りなく低いですが、接種前には健康状態をしっかりチェックし、接種後も当日中は異変がないか様子を見守ってあげてください

アニコム パフェ 獣医師

アニコム パフェ  高野 航平先生

子犬の場合は、生後16週齢を超えて3回目のワクチン接種日が設定できるのが望ましいです。
「WSAVA」の犬猫のワクチネーションガイドにも、推奨との記載があります。
WSAVA 犬と猫のワクチネーションガイドライン

犬のワクチン接種の費用目安

狂犬病ワクチンの場合

狂犬病ワクチン接種に決まった金額はありません。自治体や動物病院によって費用は異なりますが、一般的に3,000~4,000円程度といわれています。

集団接種 3,000円前後(※1)
動物病院3,000~3,500円(※2)

(※1)別途「狂犬病予防注射済票交付手数料」550円がかかります。
(※2)※別途登録料などがかかることがあります。

混合ワクチンの場合

混合ワクチンは種類によって料金が異なります。さらに、動物病院によっても金額が異なるので、接種する前に確認をしましょう。
また、ワクチン接種は病気の予防が目的なので、ペット保険の対象外になることも覚えておきましょう。

2~3種3,000円~5,000円
4~6種5,000円~8,000円
7~9種8,000~1万円

犬のワクチン接種の注意点

体調が悪い犬
ワクチン接種には、下記のような注意点があります。

接種前

  • 接種後に異変が起こる可能性を踏まえて、なるべく午前中のうちに接種をしましょう。
  • 持病がある場合は、ワクチン接種より治療を優先させたほうがいい場合もあります。
  • 直近での治療の有無やワクチン接種歴、ワクチンで副反応を起こしたことがある場合は、必ず獣医師に伝えましょう。
  • 予約をしていても、犬の調子が悪そうな場合は、ワクチン接種を延期しましょう。

接種後

  • ぐったりする、吐く、呼吸困難、けいれんなどのアナフィラキシー反応が現れることがあるので、接種後数時間はとくに異変が起きないか様子を見守りましょう。
  • 腫れ、むくみ、発熱などのアレルギー反応は、接種後、数時間~数日内に起こることがあるので、2~3日は愛犬の様子に異変がないか観察しましょう。
  • 運動やシャンプーが犬の負担になることも考えられます。接種後、2~3日は激しい運動やシャンプーを避けましょう。

獣医師からのメッセージ

ワクチン接種は毎年のことなので、痛い思いをさせるものかわいそうだし、費用もかかるし大変ですよね。
ですが、きちんとワクチン接種をすることで防げる病気があります特に子犬さんは免疫力が低いので、感染症にかかると重症化しやすいです。
大きくなってからもトリミングやホテルだけでなく、ドッグランなど他のワンちゃんたちと触れ合う機会が多いからこそ、しっかりと予防しておく必要があります

きちんと予防して、楽しいワンちゃんライフを過ごしましょう!

まとめ

種類も多く、混乱してしまいそうな犬のワクチン接種ですが、愛犬の命と健康を守るためには欠かせません。
ただし、ワクチン接種には副反応もあります。
愛犬にはどの種類の混合ワクチンが適切なのか、どの頻度で受けるべきなのか、獣医師に相談しながら接種を進めてくださいね。
関連する記事